『白鳥の飛来』


師走にもなりますと喪中のハガキが届くようになります。

喪中につき新年のご挨拶を失礼させていただきます という文章です。あの人の親が亡くなったのか 或いは夫が妻がと・・・。

同い年の喪中のハガキには特にその思いが強くなります。

〇が〇月〇日〇歳で永眠いたしました。生前賜りましたご厚情に感謝をいたしますと共に・・・という決まり文句が並びます。読んでいるうちに亡くなった人とハガキを出す人の顔が浮かび色々なことを思い出してしまいます。

還暦を過ぎると特にその思いが強くなったような気が致します。先輩方には還暦なんてまだまだと云われそうですが一日の時間が短くなり日に日に早くなっている様な気がします。

誰にでも一日二十四時間等しく与えられているにも関わらず昔と比べると一日や一年がどんどん短くなっているような感じがします。これは私だけでなく多くの人が感じていることだと思います。同じ空間を共有している仲間同士でも若い人と還暦を過ぎた人では時間の感じ方が違うのです。これは誰に聞いても同じような返事が返ってきます。

昨日の夕方、白鳥がV字型を作りながら鳴きながら飛んでいました。冬が来るぞと云わんばかりにクワックワっと飛んでいました。昨日は二十数羽の団体で飛んでいました。数羽のグループで飛んでいることが多いのですが、昨日は珍しく二十数羽のグループでした。東山の中腹や銀山温泉の入口の山々にも中腹まで白くなり愈々冬到来の様子を告げています。昨年より一週間ほど雪が遅く降りましたが遅い早いの違いはあるもののまた降雪の浅い深いの違いはあるものの必ず来るものは来るのだなと思いを深く致します。まさにルーティーンです。

白鳥もその役目を知っての事でしょうか先駆けとしての役目を果たすべく私たちにも聞こえるように鳴きながら今年もやってきました。

時間の感じ方や年齢によっての心の動きがよく見えてくるこの頃です。

除雪はまだする必要が無いようです。雪の降り積もる量によってこの辺では踏み固めるか除雪をするかの判断が変わってきます。一晩で三十センチとか五十センチとかの場合には踏み固めるほかありません。盤を作って固く踏み固めて後にその上を車が通れるようにするのです。何しろ『雪を眺むる尾花沢』ですので。

さて、この雪は根雪になることでしょう。毎年の事とは云え師走になり忙しくなってくこの時期ですが新年に向けてじっくり腰を据えて雪と共に行きましょう。新年の準備をいたしましょう。



令和四年十二月二日   上の畑観音別當 薬師寺住職 渡辺隆良


一覧へ戻る